人手不足で悩む経営者の方へ 不足の理由と9つの解消法
2018/01/19
コンビニ・スーパー・外食産業を始めとして企業はどこも人手不足で困っていることと思います。
特にアルバイトを主力としている形態は人材の流出も激しくなります。
仕事を自由に選べるのがアルバイトの特権ですので、ちょっとでも嫌なことがあれば辞めて他にいってしまうからです。
人が仕事を辞めていく背景にはどういった理由があるのか、そして 人手不足の解消法 をここでご説明していきます。
これを読んでいただければ、あなたの職場の離職率を大きく下げることができるはずです。
人手不足の理由
仕事がハード
作業量が多く、賃金に見合わないと思う人が非常に多いです。
いろんな業務を覚える必要があったり、体力的にキツイ内容の仕事だったりと嫌になることが続きます。
あまり苛酷な状況が過ぎると腰を痛めたり、手首が腱鞘炎になったりと身体の故障も起こします。
シフトがきつい
人手不足の店舗に入ると代わりがいないため簡単には休めません。
体調が悪くても出なくてはならなかったり、子どもの急な発熱で迎えに行かなければならないのに行けなかったりします。
さらに店長にシフトインのお願いをされることが毎週あります。酷いところではそれが毎日で、常にギリギリで店を回しています。
毎日店長から電話がかかってきてシフトのお願いをされたら、誰だって辞めたくなるものです。
お客さんからのクレームが多い
「お客様は神様」という言葉をかざして、神様気取りのお客さんがいて毎日クレームの対応に追われます。
もちろん正当な理由で対応を求める声がクレームのほとんどではありますが、中には酔っ払いや悪いことを考える人によるクレームというのもあります。
自分で髪の毛を入れておいてクレームをつけてきたり、ほんの少し店員の対応が遅れただけでうるさく文句を言ってきたり、値引きしろと怒鳴ってきたりなど、自分都合な文句を言ってきます。
基準を落として新人採用する
人手が足りなくなると、普通なら面接で落ちるような人も採用せざるを得なくなります。
たとえば
・あいさつができない
・身だしなみが整っていない
・会話ができない
・やる気がない
・履歴書が適当
・面接に遅刻
・態度が悪い
このような人を採用すると、今まで働いていた人はすごく不愉快な思いをすることになります。
「あんな仕事で同じ給料なのか」
「遅刻するならきちんと連絡してほしい」
「一緒に組みたくない」
「あの人がやらないぶん自分にシワ寄せが来る」
真面目な人がバカを見るような職場に一度なってしまうと負の連鎖が始まってしまいます。
頑張る人ほど辞めていく
優秀な人材がいたとしても、愛想が尽きて辞めてしまいます。
「何やってんだろ俺」
「こんなに頑張る必要ないんだよね」
「他のところで居場所を見つけよう」
「真面目にやるのがバカバカしい」
普段からストレスがたまっている分、店長や仲間のちょっとした言動でプツンと糸が切れるようにやる気を失ってしまいます。
正社員並みの仕事量
年々アルバイトに求められる仕事の量と質が上がっています。
きっかけは売上ダウンやコスト上昇です。
店舗運営の危機に迫られて対策を打たざるを得なくなります。
たとえば
・ライバル店の出店や競争の激化
・原価の上昇による経営難
・最低賃金の改定によるコスト増
・昨年と比較しての売上の減少
などの理由でどんどん仕事が増えていくことになります。
そして気付いた時には正社員と同じくらいの仕事をしています。
・接客レベル向上で他の店舗と差別化
・商品量を増やしてライバルに対抗
・商品在庫量を増やして欠品をなくす
・新商品と差し替えで売り場活性化
・キャンペーンやセールで売上対策
どんどん変わる方針
どこの店舗も本部の出した方針に従わないといけないのは同じです。
新しいサービスが始まった、セールが始まった、カウンター業務が新しく増える、新商品の陳列、オペレーションの変更などなど、目まぐるしく方針や施策が変わり、現場はその都度大荒れになります。
どんどん新しいことは増えるわ、前の施策をいつまでやっていたらいいかの指示がないわで現場は常に混乱しています。
「先月あれだけうるさく言っていたのにいつの間にかなくなった?まだ一応続けているけどどうするの?」そういうことがあなたの職場でもありませんか?
ブラック企業という評判
今はインターネットが発達しているので知りたい情報をすぐに得ることができます。
職場の評判もスマホで簡単に調べられてしまいます。
「あそこは店長が仕事をしない」
「シフトがエグい」
「24時間連勤で死にそう」
「辞めたいと言ったら店長に怒鳴られた」
「お局様が店を牛耳っている」
どうしても人は不満をぶちまけてストレス発散したい生き物なので、そうした声の方がネット上では多くなりがちです。
経験者はこない
一度職場の人手不足で辛い経験をした人は、二度と同じようなところで働きたくないと思います。
このため、経験の浅い若い人を雇って使い潰して食いつないでいくという構造が出来上がってしまいます。
でも今は少子高齢社会のため若い人がどんどん入ってくるということはありません。
キャリアのある即戦力が入ってくるという都合のいい期待はしないようにしましょう。
全て新人から育てていくつもりで構える必要があります。
時給を上げても無駄
時給を上げると応募してくる人は増えますが、あまり良い印象の人は来ません。
もし来たとしてもすぐに辞めてしまう可能性が高いです。
なぜなら、お金に釣られてきた人は他の好条件を見つけてすぐに去ってしまいますし、思ったよりキツイという理由で簡単に辞めてしまうからです。
こういう人の欲というのは無限に膨らんでいき、新しい刺激を求めてどんどん心が移り変わっていきます。
一度時給が高いところで働けても、もっと時給が高いところや効率的に稼げる場所をはないか常に探しています。
こうした人はバックれる(連絡なしで辞めてしまう)こともあり、さらに周りの従業員が困ることにもなります。
さらに、新しい人を採用するためにと時給を上げて既存のアルバイトの時給も上がっため経営が苦しくなる一方です。一度上げたものを下げる訳にもなかなかいきません。
単純に時給を上げれば人手不足が解消されると思うのは絶対にしてはいけない考えです。
人手不足対策
「そんなことは分かっている。どうしたらいいのか教えてくれ!」
という店長・オーナーの悲痛な叫びが聞こえてくるので、ヒントになればという思いで書かせていただきます。
以下にご紹介するのは 実際に私が考え抜いて辿り着き、実践してきた方法 です。
①今いる従業員を大切にする
現在のシフトを穴埋めして頑張って働いてくれていることに感謝しましょう。いてくれるだけで幸せという気持ちを持ってください。その人達がいなかったらお店は完全に回らなくなるわけですからね。
今よりさらに人がいなくなるのはマズいはずです。
新人を採用するにしても育て上げるのにまた時間が必要ですし、研修するための人件費というのもかかるはずです。
人材の流出を防ぐことが一番の人手不足対策です。今いる従業員を本当に大切にして接してあげてください。
②整理整頓をする
みんなが仕事をしやすいように職場の整理整頓を行ってください。
事務所や倉庫、更衣室などを使いやすいようにして従業員のストレスが起きにくいように環境を整えてあげる必要があります。
「みんなこれで慣れちゃってるから」いやいや、あなたのやらない言い訳でしかありません。
業務と関係のないものは置かない、私物は都度持って帰る、使った後は元の場所に戻すといったルールを作って維持管理にも努めてください。
汚くしていると新人さんが見てドン引きしますし、なにより仕事効率が悪くなりますよ。
整理整頓は人手不足解消と関係ないですか?
真面目で丁寧な仕事をする人に長く続けてもらう方がお店にとって良いですよね。
汚い職場にしていると「ここで長く続けているとおかしくなってしまいそう」と思うはずです。
③リーダーが手本となる
店のリーダーである店長やオーナー自身が、従業員の手本となるように努めなければなりません。
たとえば
・遅刻をしている
・仕事が遅い
・お客さんへのあいさつをしない
・ダラダラ仕事している
・おしゃべりばっかり
こんなリーダーを見て真面目に働きたい人はどう思うでしょうか?せっかくの良い人材も辞めてしまいますよね。
「店長は挨拶しろって言うけど、あの人が一番挨拶してないじゃん」と思われたら誰も言うことを聞かなくなります。
リーダーの下にいる人はリーダー以上にはなれません。
組織の力を強めたいと思うなら、まずリーダーが率先して大変な仕事をこなし、みんなの手本となるように行動で示してください。
一番いけないのは口だけ動く人ですよ。
人に指示した内容を自分自身でできてないようでは下に人はついてきません。
④面接時の採用基準
面接である程度の線引きはどうしてもしなければなりません。
組織の調和を乱す可能性のある人はあらかじめ弾く必要があります。
履歴書に誤字脱字や修正の跡
いい加減な性格で責任感がない
面接時の態度が悪い
仕事をサボる可能性あり
入室時・退室時の挨拶がない
人間関係で難あり
他にも、職歴の雇用期間の長さや入っていた部活などでも責任感や続けるための努力をしてきたことを推し量ることができます。
相手の性格を知るための質問のパターンも用意しておくと良いでしょう。
たとえば
・前の職場ではどんな業務内容をされてましたか?
・(学生に対して)将来の進路について何か考えていますか?
・趣味は何かありますか?
アルバイトの面接なので、圧迫面接や難しい内容の質問はしません。
気軽に答えられるようにあくまでラフな感じで聞いてください。
あとは年末年始やクリスマス、お盆、GWなどの繁忙期に出勤可能かどうかは面接で聞いて記録しておきましょう。
後々人が足りなくなる時に役に立つことと思います。
⑤最初にしっかり研修する
お店のルールや禁止事項、従業員との付き合いの仕方などを説明します。
人手不足の店はたいていこの最初の研修が不足しています。
レジ打ちや挨拶訓練などの業務内容を教える前に、仕事に向かうための心構えから教え込まなければいけません。
たとえば
・自分から挨拶に行く
・後で思い出すためにメモを取る
・新人でもお客さんから見ればプロ
・分からないことは自分から聞きに行く
・この研修でも時給が発生していること
などなど。特に初めてアルバイトをする人の場合にはこうした内容の研修だけで1時間くらい使います。
「お手伝いに来た」という感覚を捨ててもらうところから始まります。
あとは、どうして遅刻してはいけないのか、なぜ物の受け渡しは両手で行うのかなど、当たり前の事にもしっかり理由をつけて教えて分かってもらう必要があります。
また、一方的に説明するのでは聞き手が飽きてしまうので、「どうしてだと思いますか?」「相手はどんな風に思うでしょうか?」などの質問をできるだけして受講者に考えさせるようにしましょう。
自分で考えたことは記憶に残りやすいという効果もあります。
聞いた話ですが、ひどい所では出退勤の登録の仕方とレジを打つことだけ教えてあとは放置という教育しかしないお店もあるそうです。
⑥継続した指導
人はどうしても誰かに注意されなければ堕落の方向に進んでしまいます。
大半の人が楽な方に行こうとするのは脳の仕組みを考えれば当然のことです。
それを管理して適度に注意して軌道修正していくのもリーダーとしての仕事です。
小さな芽から摘み取るようにしなければ、不正や怠けた行為は次第に大きくなってしまいます。
たとえば遅刻が多い、もしくはいつもギリギリの人には注意しなければ後々要らぬトラブルを生むことになります。
たるんだ気持ちはやがて仕事のパフォーマンスにも出てきて、お客さんからクレームをもらうことに繋がってしまいます。
1時間遅刻してきたのに誰にも怒られないような管理状況が続くと、無断欠勤をする恐れも出てきます。
後々余計な仕事が増えるだけなので、細かいことでもうるさくない程度に気づいて注意していきましょう。
お互いが気持ちよく仕事をしていくうえでルールはしっかり守らなければならないことを公平に指導しましょう。
⑦個々の目標を管理する
従業員一人ひとりを見てあげて、個人のレベルに合った目標をもって仕事をしているか目を配りましょう。
人は見られていることで「きちんとしなければ」と思うこともあります。
リーダーがいない時間帯の仕事ぶりにも目を配ってください。
きちんと掃除をしていたのかやサボっていなかったかは客数のデータと店舗の状態を見れば分かるはずです。
客数が少ないのに全然仕事が進んでいなければ「なにかあったの?大変だった?」と聞くことができます。
そのためリーダーは出勤を早めにして店舗の状況を観察し、従業員への指導内容の整理と1日の作業割当の作成を毎回行いましょう。
また、人はスキルが向上することによって仕事が楽しくなるものです。
成長を実感しているうちは辞めたいと思うことは少なくなります。
常に自分で目標を見出して毎日成長してもらえるようにリーダーはフォローしてあげましょう。
⑧相談にはしっかり乗る
悩みや不満がある時はたとえ忙しくても時間をとって聞いてあげましょう。
たまたま忙しい時には、日付と時間を決めて相談の時間をとってください。
悩み相談だけは絶対に手を抜いてはいけません。
この時の対応次第で辞めるか続けるかの気持ちが決まります。
親身になって相談に乗り、本人のためを思って話している様子を感じれば、「この人のためにも頑張ろう」と思ってくれるでしょう。
また、悩みがあるうちは素直にこちらの仕事の指示を聞いてくれません。
従業員同士で愚痴を言い合って団結されても困るものがあります。
店舗全体のパフォーマンスを上げるためにも個人の悩み相談はしっかり聞くようにしましょう。
イレギュラー対応や相談・雑談に使う時間を残しておいて、仕事を常に余裕で終わらせるようにしておくこともリーダーとしての務めです。
⑨従業員に対して思いやりを持つ
最後に最も大切なのは従業員ひとりひとりに思いやりの気持ちを持つということです。
「風邪ひいてない?体調大丈夫?」
「この間は大丈夫だった?」
「お疲れ様。よかったらコレ飲んで」
「おかげで助かったよ。ありがとう!」
心の底から感謝して、そして毎回会うたびに相手の良い部分を褒めてください。
「このあいだ清掃してくれたところすごく良かったよ!お客さんから褒められちゃった」
「頑張って積極的に売ってくれたおかげで売上目標に届いたよ!本当にありがとう!」
「今日も元気な挨拶頑張ってるね!お客さんも元気もらえると思うよ」
「あなたが商品補充した日はその後の仕事がやりやすいって○○さんが言ってたよ~」
こうした声掛けというのが本当に大事です。
最初は恥ずかしくて言えないと思いますが、慣れればできるようになります。
そういうキャラを演じる俳優さんのような気持ちでやってください。
人間は、他人に認められたいという承認欲求を誰でも持っています。
どんな人でも褒められると嬉しいものです。
そしてそれが次の業務へのモチベーションとなり、仕事を楽しんで行うようになってくれます。
褒められると常に見られていると思って、見えないところまで頑張ろうと一生懸命になれるものです。
人の心を動かすのはお金ではありません。
人の心は人の心でしか動かせないのです。
さいごに
人手不足に困る店長・オーナーはできるかぎりの対策をしていると思っているはずです。
「これ以上もう打つ手はない」と思ってはいないでしょうか。
でもそれはあなたの基準で考えてるだけであって、 働く人の気持ちになりきれていないのが人手不足の原因 です。
本当に手段はやり尽くしていますか?
その合格ラインは適正ですか?
繁忙を理由に妥協していないですか?
どうしたら働く人が喜んで誇りを持って仕事をしてくれるかを考えて職場環境作りをすれば、おのずと人は職場に定着しますし、そんな職場環境を見た真面目でいい人が新人面接に来るようになります。
私はかつて小売業の経験があって店長をやっていた時期がありました。
人手不足や職場環境については本当に悩みぬき、どうしたら人が集まるのかを相手の立場に立って真剣に毎日考えていました。
上に挙げた対策法は全て私自身が実施して継続してきたものです。
職場環境や従業員のマインドを変化させるのには1年以上という時間はかかりましたが、おかげで辞める人はいなくなりましたし、みんなが真剣に仕事に向き合って一人ひとり考えて行動してくれるようになりました。
リーダーの行動次第で店は劇的に変わるのだなと実感しました。
同じように人手不足で悩める方のお役に立てたら幸いです。